Vol.3号

Web マガジン Orgue     Vol.3    2011年8月

猛暑の中、みなさまお元気にお過ごしでいらっしゃいますか?
Webマガジン Vol.3号をご案内いたします。

Webマガジン‘Orgue’ Vol.2号とVol.3号は、特別企画でオランダ在住のオルガニスト塚谷 水無子氏によるオランダオルガン情報を特集いたします。引き続き、オランダ在住である塚谷さんならではの、興味深いオルガンのお話しをお楽しみいただければと思います。

次号から、日本のオルガン、オルガニストの方がたへのインタビューも再開いたします。ご期待ください。
目次:
☆世界のオルガン紹介         オランダ 塚谷 水無子氏 

♪オランダのパイプオルガンについて教えてください。
レンブラントやフェルメールが活躍した17世紀、18世紀がオランダの黄金時代。航海と貿易で得た巨万の富を投じてオランダ人は国中の町や村がわが町に、わが教会に・・・と幾千ものパイプオルガンを建造しました。これは、いわば町おこし。昔江戸っ子が神輿や着物の裏地に趣向を凝らして「粋」を競ったというけれど、それによく似ています。
オランダは国家予算を投じ、歴史的楽器を楽器建造当時そのままのコンディションに戻す、という大修復事業を敢行しました。パイプオルガンの修復を大々的に手がけた国は、ヨーロッパでもオランダだけです。修復は莫大な費用と年月が必要なため、国によっては修復をあきらめ新しい楽器を建造する、という選択肢をとる国も多いのです。その方がコスト的にも安いということで。
すごい話ですよね。現役で活躍する楽器の年齢が「250歳はザラ、長老は470歳」なのだから。オランダの子どもたちもこの話を聞くとビックリしていますよ。

聖ボファ教会

▲天井の木目も彩色も本当にきれいです。 ⓒShinji Otani               

♪CD収録に使用した聖バフォ教会のオルガンについて
日蘭通商400年の年に秋篠宮殿下ご夫妻がハーレムの聖バフォ教会をご視察されています。その折私はミューラーのオルガンのご案内役を務めました。殿下がパイプオルガンにご関心があり、ぜひ見てみたい、聴いてみたい・・・とのご希望だったそうです。お忙しいスケジュールの合間を縫って、殿下ご夫妻はお見えになりました。
ミューラー・オルガンをご視察された秋篠宮殿下がパイプを演奏台のバルコニーから御覧になると、「オルガンパイプといってもこんなに巨大なのですね。どうやって当時の職人たちはこれらのパイプを作ったのかしら…」と鍵盤をさわりつつオルガン建造当時に思いを馳せていらっしゃったのがとても印象的でした。殿下がおっしゃったフロントパイプ(写真)がどのくらい巨大か?というと、両手を広げても抱えきれないほどの大きさで、高さ10メートル近くあるのです。
ヘンデルや10歳の少年モーツァルトがオランダ王室の招きでこのパイプオルガンで演奏会をしたというエピソードを紹介すると、紀子妃殿下もこの楽器の歴史に思いを馳せておられるご様子でした。

▲バルコニーの演奏台からフロントパイプ。まさに壮観。     ⓒDaniel van Horssen

♪歴史的オルガンを演奏するとき、苦労する点などありますか?
規模の大きい歴史的オルガンはルネサンスから現代曲まで幅広いレパートリーを弾くことが出来ます。でも、それは鍵盤の音域がクリアすれば、の話。
歴史的楽器では“製品規格”という概念がまるで無視されています。現代の教会やホールにあるオルガンとちがい、歴史的オルガンは「鍵盤の音域」が狭いのです。ハーレムの場合、手鍵盤がト音記号の加線のレ(通常はファかソ)までしかありませんでした。私の前作《癒しのパイプオルガン》*では17世紀の楽器を使用したので、音域はさらに狭く「ド」まで。  
バッハで当たり前に登場する高音の『レ』が無くてレレレ?と(笑)。「弦楽のためのアダージョ」**や「アランフェス協奏曲」**の収録は苦労しました。 
音域やピッチ(415Hzや460Hz)、調律だけではありません。鍵盤の幅が(通常のピアノより)幅広だったり、鍵盤が分厚くて指がなかなか鍵盤の底部までおりないとか・・。逆もあって鍵盤ハーモニカみたいにペラペラの小ぶりの鍵盤というのもありますよ。
昔のパイプオルガンは、楽器に規格を与えるのではなく、自分の体や感覚をその楽器の仕様に合せていくのですね。こういう作業って、まさしく一期一会ですよね。
ⓒKing Records

ファーストアルバム《癒しのパイプオルガン》は1675年製作のパイプオルガンを使って収録。

**「弦楽のためのアダージョ」は《癒しのパイプオルガン》にて収録。

♪このオルガンで演奏するのに向いている曲は? 
北独のオルガン作品はなんでも演奏できます。第三鍵盤にある(Bovenwerk)の人の声を模倣したヴォクス・ユマーナ(Vox Humana)はオランダ独特の音。独特のレジストレーシフランスのヴォワ・ユメーヌと名前は似ていていますが音色は異なります。
ここでモーツァルトやメンデルスゾーンを弾いたら絶品。リストやレーガー、ブラームスに不可欠な渋みある音色も作れます。ハーレムの楽器はプリンシパルからフルート、リードまで多種多様に68ストップですから。フルートパイプが美しいのでクレランボーのようなフランス古典も似合います。世界最大の楽器は非常に懐が深いのです。

ⓒShinji Otani

2号、3号に渡り、貴重なお話しをたくさんいただき、ありがとうございました。塚谷さんは、12月1日には、川口リリアで、

12月24日には、石橋メモリアルホールと、日本でもコンサート開催予定です。

また一人、新しい切り口でオルガン音楽を演奏され、オルガン音楽を普及する方が増え、今年は楽しみな冬になりそうです。

塚谷さんの演奏は、youtubeでもお聴きになれます。

トッカータとフーガ     http://www.youtube.com/watch?v=EN19kr5SYoY

パッヘルベルのカノン  http://www.youtube.com/watch?v=D-AMI0XuFpk


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